まさか本編の内容に入るのにこんなに時間がかかるとは・・・。だがこれくらいの方がまとめ甲斐があるというもの、続けていこう。
レジスタンスと共に戦うことを決意したゼロは、その後シエルの指揮の下で
レプリロイド廃棄処理場の制圧、
敵輸送車両の襲撃、
廃工場内の物資の奪取、
秘密基地の探索と捕虜の救出
などなど、様々なミッションをこなしていく。どれもこれまでのレジスタンスには成しえなかった大戦果である。
これだけ派手に暴れれば当然ネオアルカディア側も黙ってはいない。
そこでまず第一手としてレジスタンスベースを丸ごとがれきに変える巨大メカニロイドを投入、
四天王も自ら最前線でゼロと戦い、
そして敗れた。
いかな最新鋭の戦闘用レプリロイドとはいえ、100年という長い時を平和の内に過ごした彼らに、シグマウイルスが猛威を振るい、次々に過激なイレギュラーが生まれ続ける時代を生き延びたゼロを倒せという方が酷かもしれない。
四天王がゼロを止められなかったことで焦りを感じたネオアルカディア軍は、短期決戦を狙って主力部隊による総攻撃を敢行する。
シエルはゼロを含めた全員を逃がし、一人ベースに残るつもりだった。エックスのコピーを作り、圧政の突端を開いた報いを彼女はすでに受け入れていた。
だがゼロはシエルの言葉には従わず、最後まで残って戦うことを選ぶ。取り残された仲間を可能な限り助け、エネルゲン水晶の貯蔵庫を占拠していた敵の指揮官を撃破、敵部隊を追い払った。
どうにか全滅は免れたが、レジスタンスは消耗しきっていた。
対してネオアルカディアはすぐにでも増援を送ってくるだろう。もとより物量の差は圧倒的であり、これまでそれを補っていた士気すらも、敵主力部隊にベース内への侵入を許したことでかつてないほど打撃を受けていた。
エックスが健在である限り、どれだけ抵抗してもいずれは消される。
ならばそのエックスを消せばいい。ゼロはここでも迷い無く決断する。
そこに不思議なサイバーエルフが現れ、ネオアルカディアのシステムに干渉して侵入経路を開いたことを告げる。
記事では紹介しなかったが、このサイバーエルフは冒頭のゴーレム戦でゼロにゼットセイバーを与え、それ以来姿を消していた。シエルはこのエルフを知っているようだが、声をかける間もなく彼は去ってしまう。
謎のサイバーエルフの助けを借りて、ゼロはエックスのいるネオアルカディア中心部へと向かう。
立ちふさがる者は全て切り伏せ、ゼロはコピーエックスの下へ急ぐ。
一度は敗れた四天王も復活、コピーエックスの危機に総出でゼロに立ち向かう。
内一人、ファントムに至っては命をかけた自爆攻撃によってこの場で死亡しているが、それでもゼロの進撃は止まらない。
最深部に辿り着いたゼロの前にファントムを除く四天王三名が再び立ちふさがるが、そこにコピーエックス本人が登場。
二人はしばし言葉を交わす。
かつて多くの人間達が夢見て果たせず、オリジナルのエックスや100年前のゼロのような伝説の英雄にすら成しえなかったユートピアが自分によって完成したと主張するコピーエックス。だがゼロはそんなコピーエックスの主張を一蹴する。
「無実のレプリロイドまでも大量に処理して得た平和か。
お前も、この世界も全てまがい物だな」
実はこの戦い、記憶を失っているゼロとは裏腹に、Xシリーズからプレイしているファンならいろいろとテンションが上がる演出が盛り込まれている。
エックスは初代ロックマン同様、倒したボスの形質を受け継いだ特殊武器を使って戦うのだが、このコピーエックスが使ってくる特殊武器は、ロックマンXでエックスが使っていた武器と非常によく似た形をしている。しかし、壁に当たると反射するショットガンアイスは本物に比べ弾速が遅く、分裂し、地形を這って進むエレクトリックスパークは単純な低速誘導弾になっている。
王道のプラズマチャージショット*1やソウルボディ*2などの変わり種もなく、一言で言えば「演出としては熱いが果たしてこれはエックスなのか」とプレイヤーに思わせる絶妙な弱さがあるのだ。
「記憶はなくしたが、体はかつての友を憶えているようだ。
エックスはもっと強かった」
この絶妙な弱さがコピーエックスというキャラクターを非常によく表していると筆者は思う。即ち、実際にエックスを見たことがない100年後の人間に彼がエックスに違いないと思わせるくらいならこれで十分、というような出来になっているのである。
前回の記事で書いた彼の出生の理由を考えると、ひざまずくコピーエックスにゼロがかけた言葉は、彼にとっては最も聞き捨てならない侮辱であったに違いない。
激高したコピーエックスは変態を始める。
六本の翼、足と腕がなく、手には巨大なかぎ爪、目は真っ赤に変色して最早オリジナルの面影はない。本気を出せば出すほど彼の理想の姿から遠ざかっていくという、なかなかに皮肉の効いたデザインである。あるいはオリジナルエックスという理想の英雄像を自分の中から完全に消去し、決別しようと模索した末に出来上がったのがこの姿なのかもしれない。
だがそれでもなお、英雄の壁は厚かった。
これ以上ないほどバラバラに砕けたコピーエックスは最後の瞬間までゼロを恨んで死んでいき、彼が倒れたことでエリアの自爆スイッチが作動する。
命からがら逃げ延びたゼロは親友との再会を果たす。
そう、あの謎のサイバーエルフはオリジナルエックスがサイバーエルフ化したものだったのである。彼はダークエルフにその身を捧げた後も自らサイバーエルフとなってこの世界を守り続けてきたという。
エックスの頼みを聞き、ゼロはおもむろに立ち上がる。
「俺は悩まない。目の前に敵が現れたなら、たたき斬る・・までだ!」
以上が一作目のストーリーである。
一作目のテーマを一言でいうなら「忘却」だろう。ゼロは長い眠りの果てに記憶を失っていたが、その間に世界はもっと大切なことを忘れてしまった。
かつてのイレギュラーハンターは人間のケインがその指導者となり、イレギュラーの処分にその責任を負っていた。一方、ネオアルカディアの人々はイレギュラーであるかないかの判断、またその判断に伴う責任まで、全てレプリロイドに任せきりにしてしまった。さらにはエックスという偶像を都合よく利用し、非人道的な殺戮を正当化してしまった。
さらに、コピーエックスを9歳のシエルに作らせているあたり、この時代にはライトやワイリーのような人間とロボットの関係についての強固な信念を持ってロボットを作る人材はすでに残っていないことがわかる。いないからこそシエルは作られたのだ。
そしてシエルがいかに能力が高くとも、9歳の子どもに伝説の英雄のコピーがもたらす社会的影響力を、またそれによって人間がどこまで残酷になれるかということまで想像が及ぶとは思えない。
そうして生まれたコピーエックスには当然イレギュラー戦争の記憶はない。身に覚えのない功績で神輿に担がれ、生まれたときから自分以外の何かになりきって過ごすことを義務づけられた彼は、ある意味で史上最も自由を奪われたレプリロイドといえるかもしれない。彼がゼロを憎むのはゼロがレジスタンスに与するからでも能力が高いからでもなく、記憶をなくしてなお確固たる信念を持ち、英雄然とした強い意志を持ち、それに従って行動できる自由があるからに他ならない。
余談だが、四天王のゼロに対する反応を見るに、彼らはそれほどゼロを憎んでいない。ファーブニルはゼロのことをライバルとみなし、憎むどころかむしろ好んでいるように見える。レヴィアタンはファーブニルと同じくゼロとの戦い自体を楽しんでいるが、ライバルというよりいずれ自分の手で狩る獲物とみなしている。
ハルピュイアは当初レジスタンスに与するゼロのことを見下していたが、どちらかというと仕事柄憎んでいるというべきで、コピーエックスのような宿命的で深い憎しみとは違う。ファントムは四天王でただ一人撤退せず、その場でゼロと差し違えようとしたが、これはコピーエックスはゼロに勝てない、もし戦闘になれば確実に命を落とすという確信があったからこその行動であり、彼がオリジナルエックスから受け継いだ「忠義」の現れと言うべきだろう。
彼ら四天王は続編のロックマンゼロ2,3にも登場するのでそちらで詳しく語るとしよう。
もう一つこの場で語るべきことがある。
そう、「サイバーエルフ」とは何ぞやということである。
本編の冒頭でいきなり「妖精」という単語が出てきたことに初見の人は違和感を覚えたことだろう。SFの世界の中でぽつんと一つメルヘンな雰囲気を持つこのサイバーエルフ、これこそがXシリーズとゼロシリーズの間を結ぶ要石なのである。
シエルの研究対象の一つでもあるが、本編中にサイバーエルフについての情報は少ない。身もふたもないことを言えば、同時期にカプコンが開発していたエグゼシリーズに比べて、本作には子どもに受けそうなデザインのキャラクターが少なかったために、そこを補強するために作られたキャラなのかもしれない。
突拍子もなくシリーズに割り込んできた存在として批判の的となることもしばしばだが、実はXシリーズの時点で似たような設定は登場している。
2001年発売の『ロックマンXソウルイレイザー』にはレプリロイドに「ソウル」が存在し、それが消滅すると鉄くずになるという設定が登場する。ゼロシリーズでは彼らサイバーエルフの全てが元レプリロイドかどうかはわからないが、エルピスは2のラストでサイバーエルフ化するし、ファントムは3のサイバー空間の中で再登場することから、レプリロイドのソウルとサイバーエルフは同一ないしは非常に近い存在であると解釈できる。
二作目以降、サイバーエルフはストーリーの根幹に関わる重要な要素となっていく。
シエルのもう一つの研究テーマであり、彼らレジスタンスが弾圧される原因となったエネルギー不足を解消する「新エネルギーの開発」が、サイバーエルフの研究を通して行われることになる。
今回は一作目ということでかなり丁寧に概要を説明してきたが、次回以降は登場人物も多少被るのでもう少し簡潔にまとめようと思う。
それでは各々方ごきげんよう