あるゲーマーからの手紙

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ゼロから始める名作 『ロックマンゼロ』~その10~

 このシリーズもとうとう二桁に突入してしまったがここまで来たらひるまず突き進むとしよう。ついに最終作、ロックマンゼロ4に突入である。

 

 なんと今作は初っぱなからナレーションボイス付きの豪華仕様である。GBAソフトの容量の都合上、少々早口なのが気になるが、冒頭からして作り手の熱意が感じられる。

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 ナレーションは本作から初登場のジャーナリスト、ネージュの視点で語られ、やがて画面が暗転、舞台はネオアルカディアの新型量産機”ヴァリアント”の編隊を振り切るべく荒れ果てた沙漠を駆けるトレーラーの場面へと切り替わる。

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   「くそっ・・!バイルのレプリロイドめ・・!俺たちを連れ戻す気か!

 

 ヴァリアントたちがトレーラーの後部にとりついたその時、颯爽と現れた赤いレプリロイドが手にしたセイバーとバスターで次々と敵を討ち、あっという間に部隊を全滅させてしまった。伝説の英雄の助太刀である。

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 レジスタンスはオメガとの戦いの後、ネオアルカディアからの脱走者が増加したことを受け、移動司令室を作って彼らの救助活動に励んでいた。ゼロはトレーラーを救出後、敵部隊の母艦に乗り移りこれを撃破、ネージュらのキャラバンを救った。

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  沙漠を進む巨大な潜水艦ならぬ潜砂艦。脱走者の取り締まりには過剰ともいえる戦力である

 

 ゼロの活躍により事なきを得たキャラバンであったが、その反応は至って冷たいものであった。

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  「レプリロイドに人間は礼も言えない奴らだなんて思われたくないもの

 

 そこにトレーラーから降りてきたシエルが現れ、ゼロの名を呼ぶ。ネージュはその名を聞いて二人の正体に気づいたようだ。

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  聞けば彼らは皆ネオアルカディアから脱走してきた人間で、エリア・ゼロにあるという人間の集落を目指して旅をしているという。ジャーナリストとしてレジスタンスの噂も耳にしていたネージュは、彼らが人間の間で危険なテロリスト集団とされていることを二人に告げる。

 ゼロは何故人間を守るためのネオアルカディアから人間たちが逃れる必要があるのかネージュに尋ねる。彼女はその質問に苛立ちを隠せなかった。

 

   「・・ネオ・アルカディアが人間にとって安全!? ふざけないで!

         「・・・・あなたたち、何も知らないのね

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 エックスがゼロによって倒され、バイルが政治の実権を握った後のネオアルカディアの腐敗は凄まじく、バイルに目をつけられた者は人間であろうとレプリロイドであろうと関係なく処刑されているとネージュは言う。

 シエルはエリア・ゼロに着くまでキャラバンの護衛を引き受けようとするが、彼女はそれも断った。自分たちを含め、エリア・ゼロを目指す人間は皆レプリロイド同士の争いに巻き込まれた人間たちであり、レプリロイドを憎んでいる、正体は内緒にしておくから特にゼロはエリア・ゼロには近づかない方がいい、彼女はそう言い残して去っていった。

 

 シエルは彼女の言葉に衝撃を受ける。これまでレプリロイドの自由のために戦ってきたレジスタンスの行いが結果的に人間たちを苦しめ、レプリロイドへの憎しみを生む結果になっていたのである。

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  ネージュには忠告されたが、それでもシエルは彼らを放ってはおけなかった。結果論とはいえ自分たちがきっかけを作ったことは確かであるし、無茶を承知でバイルの支配から逃れようとする人間たちは、彼女にとってかつての自分たちを見るかのように感じられたに違いない。

 ゼロは先行調査のため早速エリア・ゼロに向かおうとする。オペレーターが転送座標を入力したその時、エリア・ゼロに多数のレプリロイドの反応が確認された。バイル軍のレプリロイドがすでにエリア・ゼロに侵入していたのだ。

 万が一集落が攻撃されれば人間たちの命はない。ゼロは急ぎエリア・ゼロに向かう。

 

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 転送された先はとても戦場には似合わない美しい森の中だった。

エリア・ゼロ、かつてイレギュラー戦争でスペースコロニーが落下した地点をこの時代の人々はそう呼んでいた。コロニー内部の環境維持装置の影響でこの部分だけは荒廃を免れ、ご覧の通りの緑豊かな土地となっている。イレギュラー戦争の中でも最も悲惨な事件が後の世の希望に繋がるとは何とも皮肉な話である。

 

 そのあまりの美しさに思わず目を奪われるシエルであったが、気を取り直してミッションは続く。バイル軍のレプリロイドはコロニーの残骸に入っていったらしく、ゼロは追撃のため現場へと向かう。

 ちなみに、このシーンのBGM『Esperanto』もおすすめなのでURLを貼っておく。ついでにトレーラーのBGM『Holy Land』もあわせてチェックしていただきたい。

     Esperanto  :  https://www.youtube.com/watch?v=pgnvpi-E-nk

     Holy Land  :  https://www.youtube.com/watch?v=bSkyX9e4j4U

 

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     森を抜け、コロニーの残骸内部へ。残骸の付近は湖になっている。

 

 コロニーの内部を進んでいくと、そこには敵の幹部クラスとみられるレプリロイドが集結していた。彼らは自らを"アインヘルヤル八闘士"と名乗り、彼ら八人を率いる大男、クラフトはゼロにバイル軍の目的と”ラグナロク作戦”の話をする。

 

            「・・俺の名はクラフト

    「ネオ・アルカディアに・・ いや、バイル様に仕える戦士だ

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  ラグナロク作戦、それはアインヘルヤル八闘士とその部隊による自然環境への同時攻撃作戦だった。人間たちが拠り所とする外界の自然を破壊し尽くし、二度とバイルの支配から抜け出そうなどとという考えを起こさないようにすること、それがバイルの目的であると彼らは言う。

 

 「もはや一人の力ではどうすることもできない」、そう言い残してクラフトは去っていった。ゼロはその言葉に若干の違和感を覚えたが、そこにシエルから通信が入り、人間の集落を発見したという。シエルとゼロはラグナロク作戦のことを人間たちに伝えるべく集落へと向かった。

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 しかし、やはりそこでも人間たちと足並みを揃えることはかなわない。

集落の代表者はレジスタンスとの共闘を拒んだ。人間のための集落の危機は人間の力で乗り越えてみせる、レプリロイドの助けなど要らない、というのが彼らの主張だった。レプリロイド同士の争いのために生活を奪われた彼らがレプリロイドを信用しなくなるのは無理もないことかもしれない。シエルは何とか説得しようとしたが、ゼロがそれを制する。

 

 「お前たちレプリロイドの戦いでこれまでも多くの人間が巻き込まれているんだ

  「俺たち人間は 誰もレプリロイドのことなんか信用しちゃいないのさ

     「・・そ、そんな・・私たちは あなたたちを守ろうと・・!

               「やめておけ

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 バイル軍の情報を伝えた上で協力する気がないというのならそれも仕方がない。こっちはこっちで、向こうは向こうでできることをやるだけ、それがゼロの結論であった。

彼らを説得している間にもバイル軍は動き続けており、後手に回ればその分不利になる。ゼロらしい、冷静な選択である。

    「・・悩んだところでバイルの部隊が止まるわけじゃない

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 こうして、人間たちとの溝は埋まらぬまま、ゼロとレジスタンスは再び狂気の独裁者ドクターバイルとの戦いに身を投じていく。

 

 「人間とレプリロイドの共存」というテーマはX時代から脈々と受け継がれてきたものだが、作中に人間が、それも科学者でも兵士でもない「普通の人間たち」が登場して中心的な役割を果たすのは、Xシリーズから数えてもこのロックマンゼロ4が初めてである。彼らの役割は物語が進むにつれてますます重要になっていく。

 ちなみに、彼ら人間は皆エックスのことを「エックス様」と呼ぶ。以前記事に書いた通り、ネオアルカディア市民のエックスに対する信頼は、もはや信仰とも呼べるものになっていることを考えるとそれは自然なことであろう。

 しかし、彼らは劇中でこんなことを言っている、「エックス様がゼロによって倒されてからというもの、ネオアルカディアは見るも無惨に変わってしまった」と。

ご存じの通り、ゼロはコピーエックスを二度倒している。一作目でシエルの作った初代を、前作でバイルが手を加えたMk.2を、そしてMk.2の方はドクターバイルによって全市民にその知らせがいっている。

二作目でエルピスが指揮した「正義の一撃作戦」は失敗に終わり、兵士たちはネオアルカディアに入ることすらかなわず全滅した。人間に被害が出ているわけもない。

 つまり彼らのいう「エックス様」とはMk.2のことであり、一作目で倒された初代コピーエックスのことにはノータッチということになる。恐らくパニックが防ぐために隠蔽されたのだろうが、エリアXが丸ごと吹き飛ぶ事態になったにも関わらず、そしてそれだけエックスに肩入れしているにも関わらず、何も知らない憶えがないというのはいかがなものか

 さらに、すでにそのことを思い出している方もいるであろうが、Mk.2の死後、ドクターバイルに全権を委任したのは他でもないネオアルカディア市民である。そんな彼らにゼロやレジスタンスを責める権利が果たしてあるのだろうか。そんなことを考えながらここから先の話を読むと面白いかもしれない。

ようやくオープニングステージが終わったばかりだが、文字数がすでにそれなりに膨らんでしまっているので一旦ここで区切ろうと思う。あと二回以内くらいで終わらせたいと思うが、・・・どうだろう、いけるか?

 

            それでは各々方ごきげんよう