あるゲーマーからの手紙

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ゼロから始める名作 『ロックマンゼロ』~その7~

 前回はオメガが街一つをまるごと犠牲にしてダークエルフを取り込んだところまでの話をした。早速その続きから入っていこう。

 

 エリアZ-3079から命からがら逃げ延びたゼロとハルピュイアだったが、一息つく暇も無くコピーエックスMk.2からレジスタンスベースに通信が入る。

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 シエルがネオアルカディアに送ったシステマ・シエルの情報を解析した結果、ダークエルフと組み合わせることで莫大なエネルギーを生み出す可能性が浮上した。

ネオアルカディア側としてはこれ以上レジスタンスとの無駄な争いを続けるより、システマ・シエルを利用したエネルギー開発を急ぎたい。

よってここにレジスタンスへの降伏勧告を行う。今すぐそれを受け入れてシステマ・シエルをこちらに提供するならばレジスタンスの身の安全は保障する、というのがその内容である。

 

 しかし、シエルはこれを受け入れなかった。

確かに、たった今目の前で大勢の無実の人間を殺した相手に「身の安全は保障する」などと言われても説得力はない。

それにただでさえ過去に悪用されたダークエルフと悪用した張本人のバイルが揃っているのだ。そこにさらにシステマ・シエルまで加えて更なるエネルギーを得たところで、平和に貢献する使い方をされるとは思えない。

     「ダークエルフを手に入れるために人間を犠牲にするような・・

        「そんな・・あなたたちは・・・・信用できません!

          「ステマ・シエルは、わたさない。

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              「・・そレが・・こたえか・・

                「いいだろウ・・

    「エネルギー資源を独占し、ゼロという、おそロシい戦闘力をモつ

             レプリロイドを保有していル

      「おまエタちなど、もハヤたダノうすヨごれたテロリストだ

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こうして再びネオアルカディア軍と戦火を交えることとなったレジスタンス。

シエルは自ら選んだ戦いの道に不安と後悔を禁じ得ないが、やはりゼロに迷いはない。

            「お前は自分を信じて戦った

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 各地からネオアルカディア軍の部隊がレジスタンスベースに向けて進軍をはじめ、ゼロはそれらを一つ一つ迎撃していく。この時登場する三人のボスは一作目でゼロが倒した四天王の部下らをバイルが改造・強化したものである。

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 ところで、八審官もバイルナンバーズを名乗ってはいるが、バイルが一から作ったわけではない。先の話になるが、オメガも正確にはバイルの作ではないし、4で敵として登場するアインヘルヤル八闘士もバイル製ではない。

強いて言うなら一作目で倒されたコピーエックスはエリアXの自爆によって残骸も吹き飛ばされただろうから、コピーエックスMk.2が唯一ぎりぎり純粋なバイル製といえるかもしれないが、そもそものコピーエックスがシエルの作であり、Mk.2はそのオリジナリティを塗り替えるほどの変更点はなく、むしろ劣化版とすらいえる有様なのでこれをバイルによる純粋な新造レプリロイドとみなすのは少々苦しい。

 

こうしてみると、ドクターバイルはロックマンシリーズ恒例の悪の科学者でありながら自分で作ったロボットを使わないという他に例をみない人物といえる。

 

 振り返ると前時代の科学者たち、ライトやワイリー、ケインといった人々は自分の作ったロボットに対する愛情を持っていたように思える。愛情があればこそ、彼らはロボットに意志を持たせ、その意志を尊重することができたのである。

人間もレプリロイドも、この世の全てを憎み呪うドクターバイルが自分でロボットを作らないのは、そういう意味で必然と言えるだろう。

 また、改造されているとはいえ、自らの手で作り出したコピーエックスに宣戦布告されるシエルの心中穏やかならざることも想像に難くない。一作目でシエルがコピーエックスを作ったのは自分であるという事実をなかなかゼロに伝えられずにいたのも、罪の意識からだけではなかったのかもしれない。

 

 

 話が少々それたが、続けていこう。

ゼロは襲い来るネオアルカディア軍を斬り伏せ、その司令塔たるコピーエックスの元へと急ぐ。かつての戦友のコピーのコピー、もはや見る影もなくなった哀しき模造品の元へと。

         「飼い慣らされた人間たちが望む正義に・・・・

          「いったい何の価値があるっていうんだ

        「価値なんてどうでもイいんダよ・・。

         ネオ・アルカディアのやっテいることはたダしい・・

         「その正義の証明になればそれでいイのさ!

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 深く思い悩み、自問自答を繰り返して全く新しい答えにたどり着く、そんなエックス本来のあり方からかけ離れた発言をするコピーエックスMk.2。別の体、別の名前で生まれてくれば彼にも別の人生が待っていたのかもしれないが、悲しいことに彼は見た目がエックスであるというただそれだけのために作られ、それ故に理不尽な死を迎えることになる。

 ゼロに追い詰められたMk.2はバイルに助けを求め、オメガを呼ぼうとするが、そこにオリジナルのエックスが現れる。

 

            「彼はもう・・ここにはいないよ

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 エックスはドクターバイルがすでにオメガを連れて逃げたことをMk.2に告げる。

Mk.2は自分が捨て駒にされたことに気がついて激高、コピーエックスの時と同じように第二形態へと移行してゼロに対抗しようとする。

 ところがMk.2が力を解放しようとすると、突然制御不能の暴走状態に陥り、そのまま自壊してしまう。

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  ドクターバイルは最初からMk.2がゼロに勝てるとは思っていなかった。むしろ彼がMk.2に期待していたのは、ゼロと戦い”派手に”負けること、そのために力を解放すると発動する自爆装置を予めMk.2の体内に仕掛けておいたのである。

 エックスはそれを知らせに駆けつけたが、結局Mk.2を止めることはできなかった。

そして彼の死によって、バイルのシナリオは急展開を迎える

 

      「・・ネオ・アルカディアの全ての善良なる市民の皆さんに

       悲しいお知らせをしなければなりません・・・・

 「たった今・・血に飢えたテロリストの手にかかり我らが英雄・・エックス様が・・・・

          「お亡くなりに・・なりました・・・・・・

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      「不肖このドクターバイルが皆さんの指導者となり・・

        「テロリスト鎮圧の指揮をとることになりました・・

               「・・・・・・・・・

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 なんと彼は自ら演出したエックスの死を利用し、ネオアルカディアの条例に基づく信任投票に持ち込んだのである。何も知らない市民はそのままバイルを信任し、指導者としての法的な権限を与えてしまう。これこそが彼の真の目的だったのである。

 こうなれば最早エックスという偶像にも用はない。Mk.2は捨て駒どころかバイル政権誕生のための生け贄にされたというべきか。

そして皮肉にも最後の一押しをしたのは他でもない、ネオアルカディア市民である

これにはさすがのゼロもコメントせざるを得ない。

         「何も知らされていない人間たち・・

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 その後、レジスタンスはドクターバイルの目的やその手段についての情報を集め、彼の野望の全貌をつかむことで、それに対抗しようという試みを行うことになる。

 

ゼロに任されたミッションは以下の四つ。

 ・墜落した宇宙船のものと思われるコンテナの回収

 ・バイルの出現とほぼ同時期に閉鎖されたエネルギー施設内部の調査

 ・旧時代の図書館の調査

 ・ネオアルカディアが新たに建造した巨大エレベータ施設の調査

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それぞれの現場にはすでにバイルナンバーズとその部隊が配されており、どれもゼロにしかできない危険な調査といえる。

 当然全てのミッションで彼らと戦う事になるのだが、ここで注目してほしいのは、戦闘こそゼロに任せてはいるが、コンテナの回収作業やデータの解析などはレジスタンスの担当者が引き継いで事にあたっているという点である。

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二作目まではゼロに一方的に助けられることの方が多かったレジスタンスたちが、この三作目からはまとまった組織としてゼロと一緒に仕事をしているという印象を受ける。

 

 些細なことに思えるかもしれないが、これはゼロとレジスタンスの間にある信頼関係がシリーズを通して発展していることがわかるいい表現だと筆者は思う。

少し前の話になるが、シエルの算出した暫定的な解析結果を基に、ゼロをミサイル基地へ転送するときの「俺は、お前を信じている」というゼロのセリフ。これもこれまでの人間関係の積み重ねあってこそのセリフであり、レジスタンスとゼロの距離感が1や2のときと比べて狭まっていることがわかる。

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 レジスタンスは最早ゼロにとって救ってやらねばならない弱者ではなく、共に戦う仲間へと成長していることがわかったところで、今回はここまでにしよう。

 次回はこれらの調査の結果明らかになった妖精戦争の真実から語っていく。

           それでは各々方ごきげんよう