あるゲーマーからの手紙

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ゼロから始める名作 『ロックマンゼロ』~その4~

 前回に引き続き、ロックマンゼロ2について語っていこう。

2の冒頭は1に比べて非常にドラマチックな演出が組み込まれている。

特に冒頭シーンのBGM『Departure』はおすすめなので是非聞いてみてほしい。

   『Departure(mythos)』 :  https://www.youtube.com/watch?v=4JesUQDuceo

 

 物語は砂嵐の吹きすさぶ荒野から始まる。

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 コピーエックスを倒し、自爆するネオアルカディア・エリアXから脱出したゼロだったが、その後1年間はシエルたちレジスタンスと合流せず、独りネオアルカディアの追っ手と戦い続けてきた。恐らく前作の終盤で襲撃を受けたレジスタンスベースを修復し、レジスタンスらが体制を立て直すまでの時間稼ぎのためであろう。

 しかし、伝説の英雄といえども大した補給も支援もなしに1年もの間戦い続けて無傷でいられるほど、ネオアルカディアは甘い相手ではない。

嵐が晴れ、朝焼けの日差しが荒野を払うと、そこに現れたのはネオアルカディアの尖兵であった。ゼロはひび割れたボディの覆いを解き、目の前の敵と対峙する。

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無数に湧いてくるパンテオンや巨大なメカニロイドは疲弊したゼロにさらに追い打ちをかける。ゼロは傷つき痛んだボディを引きずり、何とか追っ手をまくことができたが、すでに体は限界を超えていた。

たまらず荒野に倒れ込むゼロ。そしてそんなゼロを見下ろす影が一つ。

ネオアルカディア四天王の一人、ハルピュイアである

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  一方、レジスタンスはこの1年の間に急速にその勢力を伸ばしていた。

半壊していた建物は改修され、新たに加わった仲間もリーダーのエルピスの下で高い士気を維持し、日々の業務と訓練に励んでいる。

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エルピスがネオアルカディアを裏切って得た資金、物資、人材を基にレジスタンスベースはかつてないほどの繁栄を見せ、兵の士気は極めて高かった。

 しかし、そんな中シエルは独り浮かない顔をしていた。

レジスタンスが本来掲げた「エネルギー問題に起因する大量処分への抵抗」という基本理念から逸脱した勢力拡大をエルピスは行おうとしているように見えたからである。

 

    「ただ、これだけは忘れないでほしいの。レジスタンスは、

     あくまで、自分たちを守るための手段・・・ってことを

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 そんなレジスタンスに急報が入る。一年行方をくらませていたゼロが負傷してベースの門前に伏していたという。大勢がその姿を一目みようと駆け出す中、エルピスは動かなかった。

再会を喜び合うシエルらであったが、ゼロはどうやってここまで辿り着いたのか覚えていない。技術者のセルヴォに破損したボディと武器を直してもらうと、シエルが話があるので後で部屋まで来てほしいという。

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ゼロのためにセルヴォが用意したという新しい武器(チェーンロッド*1 )も受け取り、ゼロはシエルの部屋に続く廊下を歩き出す。

 すると、そこにはゼロを待ち構えていたエルピスがいた。

エルピスは圧倒的な力とカリスマ性を持つゼロへの嫉妬心を隠しつつ、共にネオアルカディア打倒を目指して戦おうと握手を求める。しかし、ゼロはこれに応じず、彼の持つ危うさをほのめかすに止めた。

 

 一方、シエルはゼロに自分の今の研究内容についての話をする。

エルピスが脱走の際に奪取したベビーエルフの研究から、全く新しいエネルギー資源の開発が軌道に乗りつつあった。

      

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       ダークエルフから作られたベビーエルフは妖精戦争の遺物のひとつである

 

ネオアルカディアで無実のレプリロイドが大量に処分されるようになった原因はエネルギー不足であり、エネルゲン水晶に代わる新たなエネルギーの開発が成功すれば、ネオアルカディアは自分たちを追う理由がなくなる

だからその研究が終わるまでは下手にネオアルカディアを刺激しない方がいいとシエルは考えているが、エルピスは別の考えを持っているらしい。

レジスタンスをたった一年で急成長させたエルピスの発言力は強く、シエルも強行に口を挟むことははばかられるようだ。

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 順風満帆とは行かないが、ともあれゼロはレジスタンスに合流し、次なる一手のために協力して戦うことを決める。

 

 以上が2の冒頭のまとめである。

 序盤から美術面に大幅な改良が見られる。ぼろ布を被っていかにも逃亡者然とした出で立ちのゼロが布を払いのけ、ひび割れたボディをさらすと同時にBGMが切り替わる。

何度見てもGBAソフトの演出とは思えない。

荒野の朝焼けがこれから始まる過酷な戦いと、その果てに待ち受ける希望の光を暗喩しているようだ。

 新しく生まれ変わったレジスタンスベースは機能的で清潔感のある雰囲気であるが、そこに漂う空気は以前のものとはあらゆる意味で異なっており、たった一年の間に様々な出来事があったことがわかる。エルピスの不敵な笑みとシエルの不安げな表情が二人の心理的な距離を表している。

 そしてこその心の距離こそが、エルピスを更なる狂気のるつぼに引きずり込むのであるが、その前に突っ込みが入りそうな点を予めさらってしまおう。

 

            「エルピスって、誰だい?」

 

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 二作目で何の前触れもなくいきなり登場してしかもシエルを差し置いて指揮官とな?

そう心の中で毒づくプレイヤーは実際多いと思われる。ただでさえ第一印象の悪いキャラクターだが、ゲームを進めるごとにその印象はさらに悪くなる

 その後の彼の本編中での行動を順になぞると以下のようになる。

 

シエルに黙って立案したネオアルカディア攻略作戦、「正義の一撃作戦」のブリーフィングをゼロ抜きで行い、

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ゼロの忠告を無視し、あくまで自分の作戦のためにゼロを付き合わせ、

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シエルの忠告も無視して逆上し、

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作戦を断行、自らも前線に赴き、

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敗北

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 シエルとゼロの予想通り、部隊は甚大な被害を被った。その上この作戦によってレジスタンスの立場はさらに悪化し、ネオアルカディアは報復としてレジスタンスベースを丸ごと破壊する特殊爆弾を積んだ爆撃機を出動させる。

 ゼロとシエルが協力して爆撃機に侵入、爆弾は解体され事なきを得た。

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その後エルピスはオペレータに伝言を残し、

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            ベビーエルフを連れて脱走

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 これより先、本作のストーリーはこの脱走したエルピスを追いかけるというのが本筋になる。

 この通り、はっきりいって擁護のしようがないほどの無能であるが、一応フォローしておくと、彼のネオアルカディア時代を知れば、彼を単なる無能として切り捨てることに多少の抵抗は覚えるかもしれない。という訳で昔話を少々・・・

 

 エルピスはもともとネオアルカディアにはありふれた量産型レプリロイドだった。

彼らには個体ごとの名前はなく、代わりに型式番号によって識別される。四天王や八審官に代表される名前つきのレプリロイドたちの指示に従い、人類の存続のために働く末端労働者である。

 

 ある日のこと、型式番号"TK-31"は四天王ハルピュイアの指揮する遺跡の調査に作業員として参加する。そこで彼は知らない方が幸せな真実を知ってしまう。

 まるで何かにとりつかれたように*2持ち場を離れ、遺跡の深部のデータベースにアクセスした彼は、そこで歴史の真実(本記事その2で長々と説明した)を知る。エルピスという名もこのとき知ったマザーエルフを用いたイレギュラー浄化プロジェクトにちなんで彼自らが名付けたものだ。

 マザーエルフ、ドクターバイル、妖精戦争、ベビーエルフ、オメガ、これら表向きには伏せられている情報を得てしまった彼にはイレギュラーの嫌疑がかけられ、ネオアルカディア当局は彼を逮捕しようとするが、ネオアルカディア内の反政府勢力の手を借りて脱走、ベビーエルフを連れてシエルらレジスタンスと合流した。

 

 真実を知ってしまったことで、彼は自分自身のことを周りとは違う”特別な”レプリロイドであると考えるようになった。名前を変えたのもその現れである。

やがて彼はかつて歴史上に幾度となく登場した英雄たちのような圧倒的な力に憧れを持つ。彼の心は、真実を知る特別なレプリロイドとしてレジスタンスらを率いる陶酔感と、かつて自分を番号で呼んだ者たちへの憎しみと嫉妬に支配されていく。

 ただ守られるだけの人間も、それをただ闇雲に守ろうとするレプリロイドも彼にとっては憎しみの対象であり、その点で彼はレジスタンスの他の者とは決定的に違っていた。

 ここまで話せば彼のゼロに対する態度や強硬にネオアルカディア侵攻を推したことにも多少納得できるのではないだろうか。そして以上のような彼の過去を知った上でその後の展開を見ると、その悲劇性が伝わりやすいのではないかと思う。

 

 この先は話せば長くなるので次回に持ち越すことにしよう。

             それでは各々方ごきげんよう

 

 

*1:鎖のように伸縮する槍。CMやイラストなどでは鞭のようにしなる描写があるが、残念ながらゲームでは直線状にしか伸びない

*2:実際この時点ですでにベビーエルフに洗脳されていたという説もある