さて、3もいよいよ大詰めである。
オリジナルエックスの協力も得て、ドクターバイルやオメガについての情報を集めたレジスタンス。古ぼけたデータの山を解析して浮かび上がってきたのは、かつて人々が意図的に歴史から削除した真実、”妖精戦争”に関する記録だった。
記録によると、イレギュラー戦争の末期、サイバーエルフが戦線に盛んに投入された最後の四年間を妖精戦争と呼び、特にダークエルフとベビーエルフの組み合わせによってレプリロイドの力を増幅させ、そのコントロールを得る技術が発明されてからは史上例をみない規模の被害がもたらされたとのこと。
バイルの行方は依然つかめぬままではあったが、以上の記録と閉鎖されたエネルギー施設でベビーエルフの量産を試みていたことを考えると、バイルは妖精戦争で用いられたレプリロイドを操る技術を再現しようとしているのではないかとシエルは分析する。
その時、シエルやゼロの隣にいた二人のオペレータが突然不気味な笑い声をあげた。
そう、彼はまさにその技術をたった今使ってすでにレジスタンスベースを掌握していたのである。会話の内容も聞き取られていた辺り、ハッキングを受けた二人はそのことに気づいてすらいない。しかもエルピスの時と違ってベビーエルフもここにはいない。
ついにバイルはオメガを介して全てのレプリロイドを意のままに操る支配者となったのである。
「今こそ思い知れ ワシを追放した人間どもよ!」
「恐怖しろ・・ ワシを追放したレプリロイドどもよ!」
「刻み込むのだ この世界に・・ 支配者たるワシの名を!」
「我が名はドクター・バイル。世界は我が手の中にある・・」
「この手を握りしめるだけで・・・・この世界を終わらすことができるのだ!!」
レジスタンスはシエルを除いて全てイレギュラー認定を受けたレプリロイドである。即ち、ゼロを除く全員がバイルの支配下となる。
ゼロはとにかくシエルをかばうが、相手は味方の上数が多すぎる。
さすがのゼロも剣を抜くことをためらい、その間に操られた兵は二人を取り囲む。
「世界に刻め・・ 我らの支配者の名は・・」
「 バイル! バイル! バイル!
バイル! バイル! バイル!
バイル! バイル! バイル!」
絶体絶命のそのとき、100年来の相棒が合流して二人を救う。
エックスは残された力でレジスタンスベース内のレプリロイドをダークエルフの影響下から外し、一時的にオメガによるコントロールを無効化した。
バイルの居場所もつかんだエックスは転送ルートを確保し、ゼロはそれに従いネオアルカディアの地下動力部”アンダーアルカディア”に向かう。
突然だが、ここで再び登場するのが一作目で死亡した四天王ファントムである。
レプリロイドの魂やサイバーエルフが住まう領域、”サイバー空間”に彼はいる。オメガの出現によってサイバー空間への扉が開き、こうして再びゼロの前に現れたという。
サイバー空間というもの自体は実はこのゲームの序盤から存在はしていた。
ステージ中に点在する扉を通るとサイバー空間に突入し、そこでは入手したサイバーエルフの能力が自動的に発動するというものだった。
光の道を通ってサイバー空間に入るとエルフたちが飛び出す
得点にこそ影響するものの、この方法で使用したサイバーエルフは消滅しないため、一種の初心者救済要素として機能している。
そう、ファントムが登場するまではまさしく単なる救済要素で片付けられたのだが、彼の登場によってこのサイバー空間こそがレプリロイドにとっての死後の世界であることが明言されたのである。従来の使用すると消滅するサイバーエルフというのもこのサイバー空間へと還っていくのかもしれない。ハードなSFの中にほのかにファンタジーの香りを漂わせるゼロシリーズ独特の空気がここにも感じられる。
ともあれ、あらゆるデータが流れ着くサイバー空間でファントムは歴史の真実を知り、それ故に今一度ゼロとの戦いに臨む。英雄の魂の真価を見極めるために。
サイバー空間はまさにそれにうってつけの戦場といえよう。
一作目に比べてかなり強化されており、彼の覚悟のほどがうかがえるが、ゼロはゼロでサイバーエルフの恩恵を受けて強化されているので、プレイヤーの腕に関係なくなかなかに熱い戦いが繰り広げられるのがこのファントム戦の魅力である。
ちなみにこの戦いに勝つと最強のフットパーツである”アルティメットフット”が手に入る。それは強敵を倒したプレイヤーへの褒美であると同時に、真実に立ち向かうゼロに対する彼からのせめてもの手向けなのかもしれない。
アンダーアルカディアをさらに進んでいくと、エックスの情報通りそこにはドクターバイルが待っていたが、そこにオメガの姿はすでになかった。
世界中のレプリロイドがバイルの手に落ちてなお戦いを続けるゼロをバイルは嘲笑い、かつてエルピスが持ち出した双子のベビーエルフ、クリエとプリエを残して去っていった。
バイルの教育のたまものか、あるいはすでに改造済みなのか、すっかり猟奇的な性格になったベビーエルフがゼロに襲いかかる。
2の記事でこの部分は取り上げなかったが、クリエとプリエという名はレジスタンスの少女アルエットがつけた名である。
「わたしのクリエとプリエ・・」
「ねぇ、ゼロ・・ わたしのベビーエルフたち、いつになったらもどってくるの?」
「ゼロ・・ わたし、さびしいよぉ」
アルエットは2でエルピスが彼らを連れ去ってからずっと二人の帰りを待ち続けていたが、それが果たされることは永遠になくなってしまう。他ならぬゼロの手によって。
断末魔をあげて四散するベビーエルフ、母を求めて泣いていたあの日の彼らはもういない。
一方、オリジナルエックスは逃げたバイルを追跡し、その転送座標をベースに残していった。もはや居場所を隠す必要すらないのか、ゼロを誘うように100年前の彼の研究施設、ゼロがかつて目覚めた場所のすぐ近くにバイルはいた。
いよいよオメガとの最終決戦である。
シリーズ恒例のボスラッシュを経てそのままオメガ戦なのだが、ここでのゲーム的苦労話を記事にしても恐らく伝わらないし興味もなかろうということで、ここでは筆者が印象に残ったボスの最期のセリフを紹介しよう。
一人は元処刑用レプリロイドのデスタンツ・マンティスク、
彼は八人のボスの中でただ一人命乞いをして死んでいった。
彼の言うことには一理ある。冷静に考えればゼロが作られたのは100年前どころの話ではないからだ。100年前に妖精戦争が終結したのだとすれば、彼の現役時代はそれよりさらに前、ロックマンXシリーズまでさかのぼり、さらに作られたのがいつかといえばそのXシリーズの時代よりさらに前、ライトやワイリーが存命の時代までさかのぼらねばならない。
そんなゼロがこの時代に現役というのは確かに異常と言わざるをえない。もうとっくに引退して後身に道を譲っているべきなのだが、悲しいかな100年経っても後身が育つどころか、人類はますます英雄という偶像に依存して生きていたのだから仕方がない。
そしてもう一人ブレイジン・フリザード、彼の最期の言葉は以下の通り。
このセリフで彼はゼロが自分より強いことを認めており、それ故にこれからも生き延びることを前提に話している。そして彼自身はバイルの作り出す新しい世界とやらに生きてみたいとも特に思っていないように筆者には聞こえる。
どちらかといえば今この場で命を燃やし尽くし、ゼロと戦い敗れることこそが彼の望みだったように思える。そう思えてしまうほどにこれから始まる様々なことの救いようのなさを、彼は洗脳されてなお予見していたのかもしれない。
そんなところで今回はここまで。尺の都合で次回は最初からクライマックスである。
それでは各々方ごきげんよう