この記事も気づけばずいぶん長くなってしまった。
今回で3は終わるが、それでもまだ4が残っている。なるべく簡潔にまとめる予定だったが想像以上に内容が濃くて全作プレイ済みの筆者でさえ驚いている。
早速だが3のラストを語っていこう。
バイルナンバーズとの再戦に勝利したゼロにドクターバイルはモニター越しに語りかける。
バイルはなお揺るぎないゼロに揺さぶりをかけるようにさらに言葉を続ける。
人間とレプリロイド、両者の間の厳然たる境界線越しに人間だけに味わえる支配者の快楽を説くバイル。しかし、ゼロはドクターバイルが人間であると知っても全くひるまない。
「支配欲とでも言おうか・・全てのものを意のままに動かす快感・・・・
これだけは人間様の頭脳がなければ味わえん・・究極の快楽だよ 」
「俺にはお前がただのイレギュラーにしか見えん」
「イレギュラーならば、狩るまで・・だ」
この辺りの台詞回しから、この時点でイレギュラーハンター時代の記憶がもう戻っているように筆者には見える。イレギュラーとは何か、その定義が曖昧なこの時代にあえてその言葉を使う辺りにゼロの戦意が垣間見える。
そしてついに相対するゼロとオメガ。冒頭で登場したものの強化版に加え、ダークエルフの力を使った第二形態も登場する。
第二形態はオメガを中心に右半身がゼロ、左半身がエックスをモチーフにしたデザインになっている。残念ながら攻撃は全て中心部か左半身が行い、ゼロ部分の出番はないのだが、エックスやゼロといった英雄の力を支配し凌駕するというオメガのコンセプトとその歪さが強調されたいいデザインであると思う。
オメガ第二形態が倒れると共に崩落する研究所から逃れてゼロが降り立った場所は、ゼロが初めて目覚め、シエルと出会ったあの場所だった。
そこにドクターバイルの声が響く。
虎の子のオメガが破壊されたにも関わらず、それを気にもとめていないように彼は笑っていた。
「クククククーッ!見事だぞ!ゼロ!」
「とても偽物とは思えんパワーだ」
そのとき、オメガの残骸の一部から一条の光がさし、中から何者かが姿を現す。
中から姿を現したのは、ゼロとうり二つのレプリロイド。
否、かつてゼロだったもの、そのオリジナルボディにオメガが宿ったものであった。メモリーを抜かれ、その戦闘力を極限まで高めた上でバイルの意のままに動かせるよう改造されたかつてのゼロ自身である。
「さぁオメガ・・ いやオリジナルゼロよ!」
「哀れな偽物が100年見続けた夢を・・そろそろさましてやれ!!」
せっかくなのでここのBGM"Cannonball"を聴いていってほしい。
寂しくも勇壮な名曲である。
https://www.youtube.com/watch?v=szRnsll039w
本記事を順にここまで読んでくれた方はその2でオメガの正体についても触れていたのでさほどの衝撃はないかもしれないが、初めてプレイしたときは筆者自身この展開にはなかなかに震えた。
しかもこのオリジナルゼロ、ただ外見が主人公と同じというだけでなく、X時代のゼロの動きや技を再現しているのである。
Xシリーズではエックスがゼロと戦うシーンが何度かあるが、そのいずれにも現れている特徴的な動きがある。即ちショット→ショット→セイバーの連続攻撃である。
言葉で言ってもわからないだろうから動画で見てみてほしい。
X2のゼロ戦(1:33辺り) → https://www.youtube.com/watch?v=b22ktINSXe0
X5のゼロ戦 → https://www.youtube.com/watch?v=bn5Zbjr2wEA
ゼロ3のオメガも同じ動きを取り入れている。
ショット二発に セイバー!
さらに、Xシリーズのゼロにはいくつか技があり、その一部はゼロシリーズでもEXスキルとして再現されているが、一番の大技、地面を殴りつけて放射状にエネルギー弾を飛ばす”落鳳破”だけはついぞ登場しなかった。
その落鳳破によく似た技をオメガは使ってくる。
よく似た、というのは原作同様の密度や速さでは回避不可能になってしまうため、ゲーム上の理由でそれらが調整されているという意味である。いずれにせよ、オリジナルとコピーの覆しようのないスペック差を表すいい演出である。
X4の落鳳破 オメガの技、弾は徐々に広がる
それから、まさかと思い筆者は記事の編集中にスクリーンショットをさらに細かく分けて見比べてみた。左がゼロ、右がオメガである。
ゼロのバスターは一作目でシエルをかばって戦死したレジスタンスの青年ミランの形見であり、ゼロはそれを自らのエネルギーユニットと接続することで強化して使っているという設定がある。従ってゼロシリーズを通してゼロのバスターは従来のアーム一体型ではなく、人が銃を撃つときと同じように手で持って引き金を引いて使っている。
オメガのドットをよく見ると、X時代のゼロと同じアーム一体型のバスターになっている。正直これには筆者も驚いた。プレイしている間は生き残るのに必死でそこまで目がいかなかった。
そんなファンサービスの嵐のようなオメガ戦だが、ゼロにとっては試練である。
先述の通りスペックの差は歴然であり、心技体のうち体は圧倒的に相手の有利といえよう。ならば心と技で勝るしかない。ファントムが見極めようとした「英雄の魂の真価」が今、試される。
例え相手が自分自身であろうとゼロに迷いはなかった。ついに自分自身の影に勝利したゼロ。しかし、ダークエルフがいる限りオメガは何度でもよみがえる。
ゼロは再生を阻止しようとするが、ダークエルフの力で近寄ることすらできない。
そこに元ネオアルカディア四天王ファーブニル、レヴィアタン、そしてハルピュアの三人が現れ、ゼロに加勢する。
三人の攻撃を受けて再びひざまずくオメガ。
そしてエックスの働きによってダークエルフは元の姿、マザーエルフに戻りつつあった。そうなれば最早オメガを再生することはできない。形成逆転である。
勝敗が決し、今度こそオメガにとどめを刺そうというその時、バイルがゼロにかけた言葉は命乞いでも負け惜しみでもなかった。
「やめろゼロ!!」
「お前のオリジナルボディだぞ 惜しくはないのか!!」
「一生そんな安っぽい偽物の体で生きていくというのか!!!」
それは純粋な保存欲求だった。一度破壊されれば二度と戻らない、もはやこの世で誰一人として作り方を知る者はいないオリジナルゼロのボディ、それが目の前で壊されることに対する純粋な恐怖だった。
ある意味でこのシーンがバイルの最も「普通の人間らしい」シーンかもしれない。
しかし、ゼロはすでに覚悟を決めていた。
その名で自分を呼ぶ者が現れた、その日から。
オリジナルゼロのボディが起こした大爆発にのまれたゼロ。
途切れる意識の中で聞こえたのは、かけがえのない戦友の最期の言葉だった。
「僕にはもう・・ほとんど力が残っていない・・」
「この世界に・・長くいることも・・難しくなってきたよ・・」
「ゼロ・・・・ 君に・・この世界を任せたい・・・・」
「まだこの世界から・・バイルの脅威は去っていない・・・・」
「人間と・・レプリロイドを・・守ってあげてほしい・・」
「ゼ・・ロ・・・・ 君・・なら・・できる 君・・な・・ら・・・・・・」
最期まで人間とレプリロイドの将来を案じ、親友に世界を託してエックスは逝った。
誠にドクターライトの最高傑作の名に恥じぬ立派な最期である。
ゼロが次に聴いたのは少女の声、自分の名を呼ぶシエルの声だった。
ゼロが目をさますと、そこはレジスタンスベースだった。ゼロが目をさましたことで仲間たちが喜びの声を上げるなか、あたたかで優しい光に包まれた一匹のサイバーエルフがゼロの前に現れる。
バイルの呪いが解け、すっかり元の姿に戻ったマザーエルフ。
彼女がゼロをここまで運んでくれたのだという。ゼロの無事を見届けた彼女は再びどこかへ飛び去ってしまうが、今度は追う者はいない。
彼女は100年ぶりに自由を手にしたのである。ゼロと同じように。
一方、シエルはエックスから聞いたゼロの正体について言及する。
「あなたの体がたとえ・・コピーであったとしても・・・・」
「あなたの心があなたである限り あなたは、ゼロ・・」
「ゼロ以外・・何者でもないわ・・」
それはゼロを励まそうとするシエルの精一杯の言葉だった。
そんな優しいシエルの言葉に感謝し、ゼロは無くしてはならない大切なものを握りしめるように言葉を紡ぐ。
「俺は、俺でしかない・・・・」
「俺は・・」
「・・・・ゼロだ」
・・・以上がロックマンゼロ3の内容である。
民主主義と専制君主を同時に皮肉る秀逸なストーリーにロボットものの王道たる主人公機と同型の敵をラストに据え、「自分とは何か」という哲学的テーマをも巻き込んだ繊細かつ大胆な傑作といえよう。
エックスの最期のシーンなどは特にシリーズファンの涙を誘う。ロックマンシリーズはそのほとんどが未完であり、主人公の最期が描かれることは極めて希であるが、レプリロイドと人間の未来を案じ続けたエックスが、それを託せる親友に最期の言葉を残すというこのシーンはXシリーズの行き着く先として非常に魅力的であると思う。
ちなみに、ここで是非紹介しておきたいのだが、この3のラストのオメガ戦をドラマチックに演出したファンメイド作品がyoutubeにあるので、興味を持たれた方は是非一度見てほしい。素晴らしい完成度で筆者などはつい涙が出てしまうほどの力作である。
ZERO VS. OMEGA ZERO DECISIVE BATTLE
https://www.youtube.com/watch?v=1VRUBV7ccsw
この3の出来があまりにもよかったために完結編である次作、4を過小評価する者も散見されるが、筆者としては4あってのロックマンゼロだと思っているので、次回からは是非とも4の話をしようと思う。
まだまだ語り足りないところもあるが、とりあえず今回はここまでにしておく。