前回の記事を読むとこのまま爽やかにシリーズが終わりそうな空気さえあったが、そういうわけにはいかない。前回はあえて触れなかったが、2のエンドロールの後には露骨な続編への布石が打ってある。
・・・明るい未来はまだまだ遠そうである。
それはそうと、エルピスは最後にこんなことを言っていた。
彼の言う「とんでもないこと」とは恐らく自分がダークエルフの力を使って人間たちを皆殺しにすることを指していたのだろうが、多くのプレイヤーは心の中でこう思ったことだろう。
(エックスを破壊した時点で十分とんでもないことなんですが・・・)
実際彼はエックスが破壊され、ダークエルフが目覚めるということがどういうことなのかを正しく理解していたとは思えない。彼はダークエルフのもたらす力にばかり気をとられ、それがもともと何のために誰が作ったのかというところまで考えが及ばなかった。
結果として、彼はその無知ゆえに更なる災いの引き金を引いてしまう。それこそエックスの破壊よりもっととんでもないことが起こり、そこから3の物語は始まる。
ダークエルフがいずこかに飛び去ってから二ヶ月後、ゼロとシエルらレジスタンスは降りしきる雪の中を進んでいた。
シエルの研究がついに実を結び、新エネルギー”システマ・シエル”の開発に成功、その旨をシエルはネオアルカディア側に伝えたが、向こう方は未だ反応を見せない。
そんな話をしているとやがて雪が晴れ、彼らの捜し物がゆっくりとその姿を現す。
それは巨大な宇宙船だった。
ダークエルフのものと同じエネルギー反応を示す大気圏外からの飛来物、その正体を確かめるために彼らはこの地にやってきたのだった。
そしてそこには同様の理由で駆けつけたネオアルカディア軍がいた。
ゼロがルートを確保するべく先行するが、増援部隊によって後方で待機していたシエルたちは包囲されてしまう。そこにハルピュイアが現れ、ゼロとレジスタンスらにこれ以上危害を加えない代わりにこの地を離れるよう促す。
シエルらを先に帰還させ、ゼロは一人現場に残る。
自分を呼ぶ得体の知れない声を辿り、宇宙船内部へと誘われていく。
奥へ奥へと声のする方に進んでいくと、そこには長髪の巨人と死闘を繰り広げ、追い詰められたファーブニルとレヴィアタンの姿があった。
巨人の名はオメガ、かつてネオアルカディアを追放された悪魔のレプリロイドである。ゼロは剣を抜き、オメガと対峙する。
「オメガとか言ったな・・」
「お前か・・ 俺を呼んでいたのは・・」
並外れたオメガのパワーと耐久力に苦戦を強いられるゼロ。雄叫びともうめき声ともとれるその声からは不気味さ以上のものは何も感じ取れない。
するとそこにハルピュイアが加勢し、オメガに攻撃を加える。
一瞬隙を見せたかに思えたが、ある人物の登場によって戦闘は中断される。
「クーックックック・・ オメガよ・・そのくらいにしておけ」
「お前は今日から・・ネオ・アルカディアのメンバーとしてこの方と共に戦うのだ」
「仲間になる者を殺してしまっては、居心地も悪かろう・・」
100年前にオメガと共に追放されたドクターバイルの登場、そしてその言葉に困惑を隠せないハルピュイア。さらに彼に追い打ちをかけるように現れたのは、ゼロによって破壊されたはずのコピーエックスだった。
「100年前にネオ・アルカディアを追放されたはずのお前がなぜオメガを!?」
「ボクが・・ よンだのサ・・」
彼はコピーエックスMk.2、即ちゼロが倒したコピーのさらに後継機であり、バイルによって作られた模造品である。一作目に登場したものと見た目こそ同じだが、セリフが所々カタカナになっているなど、作りの荒さが強調されている。
いかにもバイルに都合のいい傀儡といった雰囲気である。
ハルピュイアはエックスを説得しにかかるが、すでに彼の発言力は失われていた。
「この男が作ったダークエルフとオメガのせいで・・どれだけ多くの人間が死んだ
か・・」
「新エネルギーが完成し、エネルギー問題が解決するかもしれない時に・・」
「人間を危険にさらすようなことは、おやめください!」
「エックス様に意見をするのか?ハルピュイア・・」
バイルは自ら作ったコピーエックスの補佐官として見事にネオアルカディア入りを果たし、実質的な権力を掌握したばかりか、八審官を改造して新たに”バイルナンバーズ”として自らの手駒とすることにも成功した。
以降、その八審官改めバイルナンバーズ及びネオアルカディア軍とのダークエルフを巡る戦いが本作のストーリーの本筋となる。
とはいえ、究極のサイバーエルフであるダークエルフを”捕らえる”などということがそうそうできるとは思えない。
現に本作序盤の四つのミッションの内ダークエルフと直接接触するものは一つのみであり、敵の指揮官であるバイルナンバーズもゼロによって倒されるが、その後ダークエルフは再び姿を消し、両陣営ともに捕獲に失敗している。
ダークエルフを捕らえる手段があるとすれば、かつてその封印に成功したオリジナルのエックスか、妖精戦争でその力を利用したオメガ以外にあり得ない。そしてオリジナルのエックスのボディはすでに失われている。全く本当にとんでもないことをしでかしてくれたものである。
つまりこの戦いは、この世でただ一人オメガを従えるドクターバイルの側が初めから圧倒的に有利なのである。レジスタンスに抵抗の余地があるとすれば、ダークエルフと接触する前にオメガを破壊するしかない。
しかし、そこがバイルの狡猾さである。
序盤四つのミッションの一つに基地に集結した部隊への攻撃ミッションがある。事前調査の結果、基地の近くで長距離ミサイルの建造が行われており、敵部隊はそのサポートのために集結しているとの結論が出る。
ゼロが敵部隊を攻撃してミサイルの建造を遅らせ、その間にレジスタンスがミサイル本体への転送ルートの解析や地上ルートの探索を行うのだが、実はこのミサイルはレジスタンスへの攻撃用ではなく、オメガを載せてダークエルフの元まで直接輸送するためのものであることが後に明らかになる。
ダークエルフがミサイルの直撃に耐えられることを前提とする大胆な作戦だが、発射直前まで転送も地上からの侵入も難しい場所にオメガを隠し、一度発射してしまえばミサイル内部に入り込まれない限り着弾の直前までオメガを保護できる非常に合理的な策といえる。
場所によっては大勢の人間が犠牲になることを除けば。
その後ダークエルフが再び現れたのはネオアルカディアのエリアZ-3079、中心地から最も遠い人間の居住区である。
ゼロやレジスタンスの抵抗もむなしく、ミサイルはダークエルフ以外の全てのものを破壊してオメガをダークエルフの元へと導いた。
そしてついに邂逅を果たす悪夢の兵器たち。
オメガは咆哮をあげ、ダークエルフとの融合を果たす。全身を黄金色に染め、ゼロに襲いかかるが、そこに再びハルピュイアが現れる。
コピーエックスがバイルの傀儡としてよみがえり、幹部の地位も奪われた彼に出来ることは、勝てる見込みのない相手に立ち向かうことだけだった。どうしてこう彼は毎回間に合わないのだろうか
「我らネオ・アルカディアのレプリロイドは・・」
「人間を守る・・・・・・この地上の唯一の正義」
「これが・・この廃墟が・・貴様らの正義かーっ!バイルーーーッ!」
大勢の人間の命を奪ったバイルへの、そしてそれを止められなかった自分自身への怒りを込めた彼の一撃は、しかしオメガにはとどかない。
激しい反撃をくらい負傷したハルピュイアをゼロがかばい、シエルは二人を緊急転送、レジスタンスベースに収容した。
3は2までと比べて内容が濃いので書くのも読むのもこれまでよりエネルギーが要りそうである。ということで一旦区切って続きは次回その7で語るとしよう。
それでは各々方ごきげんよう